尿の臭い1


 

こんにちは、e-URO2023です!



今回は「尿の臭い」について考えたいと思います。


「尿の臭い 第1回」です。

 


泌尿器科を受診される方の中に、「尿の臭いが気になる」と受診される方がいらっしゃいます。


たいがいの泌尿器科では、尿の検査をして、膀胱炎や膀胱がんなどが無ければ「大丈夫!」と言って帰されてしまうケースがほとんどではないでしょうか?


実は泌尿器科医の多くは、尿の臭いについて詳しく知らないと思います。

教科書にも載っていないですし…


でも、実際には「尿臭」で困っている方は多いと思われますし、言い出しにくいので相談もしづらいデリケートな悩みですよね。


 

今回は自分の勉強も兼ねて、尿の臭いについて検証していきたいと思います。

 


尿臭の原因


 尿の臭いの原因として、以下の4つが考えられています。

 


尿の臭いの原因

①アンモニア

②フェノール化合物

③尿臭をもたらす食物の摂取

④尿比重が濃い(水分を十分にとっていない)

 


 

 今回は①の解説です!


 


アンモニア


尿には尿素が含まれます。この尿素が分解されて作られるのがアンモニアです。

尿素はウレアーゼによって「二酸化炭素」と「アンモニア」に分解されます。

このウレアーゼを産生する菌が尿中にいると、アンモニアが作られ尿臭が起こるんですね。

 


全ての細菌がウレアーゼを産生するわけではないようです。


尿路感染症の原因として最多である大腸菌(E.coli)や緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)はウレアーゼ産生能が少ないとされているようです1)。

 

ウレアーゼ産生菌としてはProteus mirabilisMorganella morganiiなどがあります。

ウレアーゼ産生菌のゴロがあるみたいですね2)。




 

Proteus mirabilisMorganella morganiiなどは尿路感染症の原因菌としてしばしば目にします。どちらも膀胱留置カテーテルや尿路結石がある方など、複雑性尿路感染症の原因となりますね。

Helicobacter pyloriは、いわゆる「ピロリ」ですね。これは胃潰瘍の原因として有名です。尿の中には普通いません。

胃の中は強い酸性環境にあります(pH 1から2!)。この酸性環境によって、食べ物の消化を助けているんですね。

こんな環境では、通常の細菌が生き延びることはできません。

Helicobacter pyloriはウレアーゼを産生しアンモニアを作り出すことで、周りの環境をアルカリに傾けます。

これによって自身が生存できるpH 6から7程度に環境を調整しているんですね。

 

 

つまり、アンモニアが増えると、尿がアルカリ化します。尿がアルカリ化すると、細菌にとっては繁殖しやすくなります。そのため更にウレアーゼ産生菌が増殖し、アンモニアが作られるという負のループが形成されてしまうんですね。




参考文献

1) 新井 豊,竹内秀雄,友吉唯夫 : 尿中分離細菌のウレアーゼ活性.泌尿紀要 35 : 277-281,1989


2) https://peing.net/ja/q/acee4356-363c-43bd-9098-a4c3bdc229ea


フリー画像・写真素材 写真AC https://www.photo-ac.com/



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