尿の臭い2
こんにちは、e-URO2023です!
今回は「尿の臭い 第2回」です!
⇒前回記事はこちら
尿の臭い 第1回:アンモニアについて
尿の臭いの原因として、以下の4つが考えられます。
①アンモニア
②フェノール化合物
③尿臭をもたらす食物の摂取
④尿比重が濃い(水分を十分にとっていない)
今回は②、フェノール化合物についての解説です!
フェノール化合物とは?
フェノール化合物というのは、ベンゼン環に水酸基(OH)がくっついた化合物の総称です1)。
⇒フェノール化合物について
グルクロン酸抱合
尿は体の中にある有害物質を、体の外に排出する役割を果たしています。
体内にある有害物質は様々な方法で無害な形で代謝され、胆汁や尿によって体の外に排出されます。
物質には水に溶けやすい「親水性」なものと、溶けにくい「疎水性」なものがあります。
まぁ、水と油みたいなものです。油は水に溶けることはありませんよね。
油、すなわち脂溶性の物質は「疎水性」です。
胆汁や尿によって、体の外に排出できるのは、「親水性」の物質だけです。
疎水性の物質は、そのままでいると体から出ることはありません。
こうして疎水性の物質、特に有害物質が体に蓄積すると、からだに様々な悪いことが起きます。
なので、からだは「疎水性」の物質に水に溶けやすくなる物質をくっつけて、水に溶けやすくする仕組みを備えています。
頭いいですよね!笑
このように、脂溶性物質を親水性にするプロセスのことを「抱合(ほうごう)」と言います。
尿には、このように「抱合」された様々な有害物質が排出されます。
「抱合」に用いられる物質は何種類かありますが、代表的なものが「グルクロン酸」です。
フェノール化合物によって尿が臭う仕組み
…前置きが長くなりました。
フェノール化合物は、脂溶性物質です。つまり「疎水性」です。
体内にとっては有害物質であり、グルクロン酸による抱合を受けて、体外へ排出されます。
胆汁や汗や尿に含まれているようです。
さて、グルクロン酸抱合されたフェノール化合物は、それだけでは臭いの元にはなりません。
しかし、尿が放置されるとどうなるでしょう。
実は、ある種の細菌は「β-グルクロニダーゼ」という、グルクロン酸抱合体を分解する酵素を分泌します。
この「β-グルクロニダーゼ」によって、体の外でグルクロン酸が取れたフェノール化合物が、臭気として感じられる、という仕組みのようです2)3)。この分解は徐々に進むため、尿の臭いは「徐々に強く」「持続する」ように感じられるんですね。
便器でトイレをする時に、少し飛び散ってしまった尿があると、この尿中に含まれるフェノール化合物のグルクロン酸抱合体が徐々に分解されて尿臭として感じられます。
尿失禁などで下着についてしまった尿も、時間をかけて徐々に尿臭を出すようになってしまいます。
このことからは、
・まずはこまめに便器とその周りを拭き掃除する
・尿がついてしまった服や下着はこまめに取り替える
といった対応が重要そうです。
さて、この「β-グルクロニダーゼ」を分泌するのはどういった細菌なのでしょうか?
正解は、大腸菌(E.coli)です。
腸内細菌の中でβ-グルクロニダーゼを分泌するのは、原則大腸菌のみです4)。他に志賀毒素の産生菌として有名なShigellaやSalmonella菌はあるものの、それ以外の腸内細菌はβ-グルクロニダーゼを産生しません。
大腸菌は、尿路感染症を起こす細菌の中で80%以上を占める、最も有名な菌です。
第1回でも述べた「アンモニア」は尿臭として有名な物質です。
しかしアンモニアは揮発性物質で、あまり尿の中に残存しないようです。
しかも、かなり大量のアンモニアが無いと、強いアンモニア臭としては自覚されないようです。
ですので、水洗便所が発達した現代においては、「アンモニア」は尿臭の原因としてはマイナーかもしれません。
しかも、第1回で紹介した、アンモニアを生成する細菌としてのProteusu mirabilisやMorganella morganiiは、尿路感染症の原因菌としては比較的まれです。
このことからは、尿臭のメインの原因としては「フェノール化合物」なのかもしれませんね。
参考文献
1) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%AB
2) 森一郎,石田浩彦,矢吹雅之,秋葉俊一: β-グルクロニダーゼ阻害剤による尿臭の産生抑制. 2010年度日本農芸化学会大会講演要旨集. 155, 2010.
3) 森一郎,矢吹雅之,石田浩彦,柏木光義: β-グルクロニダーゼ阻害剤による尿臭気の生成抑制. におい・かおり環境学雑誌. 47(3), 222-229, 2016.
4) 坂崎利一 : 細菌分類学と食品微生物学. 日本食品微生物学会雑誌. 11(1), 1-7, 1994.
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